円形脱毛症

円形脱毛症とは髪の毛が円形や楕円形に抜け落ちていく病気です。男女差はほとんどなくどの年齢でも発症しますが、比較的20~30代に多い傾向があります。人口の1~2%に発症するといわれ、100万人から200万人に及ぶと推測されています。再発を繰り返しやすいです。
原因として以下の4点が挙げられます。
・自己免疫疾患
髪の毛の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生すると考えられています。免疫機能の異常を発生させる要因としては、疲労や感染症などの様々な要因があります。
・アトピー素因(家族か本人にアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎のいずれかがある)
・精神的ストレスによる影響
・遺伝的要素

円形脱毛症の進行状況により、以下のいくつかの特徴的な症状が見られます。
初期症状
・何の兆候もなく突然脱毛が始まった。
・頭部に地肌が見えるところがある。
・爪に小さなでこぼこがある。
・アトピー性疾患を患っている。
・脱毛斑が円形または楕円形であり、境界が比較的はっきりしている。
進行中の症状
上記初期症状のどれかに該当し下記の症状が見られます。
・朝起きた時、枕に抜けた毛が数本以上見られる。
・脱毛斑の周囲の毛を引っ張ると簡単に抜け、痛みもほとんどない。
・抜けた髪の毛の毛根部分が、細くとがった状態である。
・脱毛斑が広がってきた。
回復期の症状
・脱毛斑の一部に細く短い毛が生えている。
・脱毛斑に毛穴が点々と見える。
・脱毛斑の周囲の毛を引っ張っても容易に抜けない。

脱毛の場所や範囲によっていくつかの種類に分かれます。
・単発型(最も多く脱毛斑が1か所、約80%が1年以内に自然治癒)
・多発型(脱毛斑が2か所以上、適切な治療を行っても、完治まで半年から2年かかる場合が多い)
・蛇行型(後頭部から側頭部の生え際に沿って広がる、治療期間が複数年にわたる場合あり)
・全頭型(髪が完全に抜け落ちる、相当の治療と期間が必要)
・汎発型(頭髪に加えて、眉毛、まつ毛、体毛なども抜け落ちる最重症型)

円形脱毛症は、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、あるいは重症筋無力症などの自己免疫性疾患を合併しうることが知られており、当院でも必要に応じて血液検査を行っています。
また鑑別診断として先天性三角形脱毛症、トリコチロマニア、男性型脱毛症、休止期脱毛症、頭部白癬、原発性瘢痕性脱毛症、脂腺母斑、圧迫性・牽引性脱毛症、腫瘍性脱毛症、梅毒性脱毛症、全身性エリテマトーデス、遺伝性毛髪疾患などがあげられますが、円形脱毛症は基本的には肉眼所見とトリコスコピー(頭皮、頭髪を対象としたダーモスコピー)から診断可能なことが多いです。
治療の考え方としては、基本的には患者さんやその家族の希望と、それにあたる医師の判断、保険適用も含めた適正な適応の有無に基づいて行われるべきとガイドラインにも記載があります。

円形脱毛症診療ガイドライン2024で推奨されている治療法は下記となります。当院で行っていないものもありますのでご了承お願いします。
1.強い推奨
・ステロイド外用療法
炎症や免疫機能を抑える効果が認められています。単発型から融合傾向のない多発型に対して、1日1~2回のstrong以上のステロイド外用療法を行うよう推奨されています。
・ステロイド局所注射療法
炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、脱毛斑に注射する治療法です。症状が改善しない単発型、および多発型の成人患者に対して使われることがあります。高い水準の発毛効果がありますが、ステロイドに副作用を考慮し、原則としてお子さんに対しては行いません。
・かつらの使用
使用する希望がある患者さんには推奨されています。
・経口JAK阻害約またはJAK3/TECファミリーキナーゼ選択的阻害薬
当院では行っていないため大学病院紹介となります。頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められ、過去6か月程度毛髪に自然再生が認められない重症かつ難治性の場合の治療法になります。
2.弱い推奨
・セファランチン内服療法
アレルギー反応を抑制する作用や、血流を促進する作用などがあります。単発型および多発型の方に併用療法の一つとして行ってもよいとされています。
・冷却療法
液体窒素などを脱毛斑にあてて、誤作動を起こした免疫細胞の働きを抑えて、毛髪の再生を図る治療法です。単発型または多発型の方に併用療法の1つとして行ってもよいとされています。
・カルプロニウム塩化物の外用療法
市販の育毛薬にも含まれている成分で、発毛効果が認められています。併用療法の1つとして行ってもよいとされています。
・抗ヒスタミン薬内服療法
アレルギー反応を抑制する作用があります。アトピー素因(アトピー性疾患であるアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎のいずれか)を持った単発型および多発型の方に使用することが多い薬です。
・局所免疫療法
人工的にかぶれを起こす化学試薬を使い、頭皮にかぶれを起こさせることにより発毛を促す治療法です。治療期間は半年から1年以上でじっくり取り組む必要があります。比較的広範囲に脱毛している方に対して行われます。お子さんにも使用できます。
・グリチルリチン、メチオニン、グリシン配合錠の内服療法
炎症やアレルギーを抑える作用があります。単発型および多発型の方に併用療法の一つとして行ってもよいとされています。
・ミノキシジル外用療法
血管を拡張する効果により、発毛効果が認められています。併用療法の1つとして行ってもよいとされています。
・紫外線療法
神保町駅前皮膚科では行っていますが上野駅前皮膚科では行っていません。
ナローバンドUVB療法は主に通常型(単発型または多発型)の成人例に対して行ってもよいとされています。
・ステロイド内服療法
肥満・満月様顔貌、緑内障、糖尿病、月経不順、消化器症状、ざ瘡、骨粗しょう症などの副作用があるため当院では行っていません。急速に進行している、脱毛巣が頭部全体の25%以上の方で成人例に行ってもよいとされています。休薬後の再発率が高い事より、ステロイドの外用・注射などの他標準的治療に抵抗する方に限り適応となります。
・静脈注射によるステロイドパルス療法
炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、入院の上3日間ほどの短期間で点滴投与する治療法です。適応の方はステロイド内服療法と同じです。
  
またセルフケアとして
・規則正しい生活とたっぷりの睡眠をとりましょう
・軽く汗ばむ程度の運動や、入浴で血行を促進しましょう
・バランスのとれた食事や、身体を冷やさない食事をとりましょう
・ストレスの軽減
・正しいシャンプー方法で毎日洗いましょう