花粉症

花粉症とはヒノキ科のスギやヒノキ、カバノキ科のハンノキやシラカンバ、イネ科のカモガヤやオオアワガエリ、キク科のブタクサやヨモギなどの花粉が原因となるアレルギー性の病気です。花粉症の方は増え続けていて2019年の調査で東京都民3015人中の有病率がスギ花粉症で47.0%、スギ以外の花粉症で24.0%という報告があります。日本では約60種類の植物が花粉症を引き起こすと報告されていますが、この中でも最も多いスギ花粉症について説明します。
 東京をはじめ関東ではスギ花粉は2月から4月にかけて多く花粉が飛散します。症状としては、鼻の3大症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、目の3大症状(目のかゆみ、充血、涙が出る)の他に皮膚のかゆみ、鼻のかゆみ、後鼻漏(鼻からのどの奥に流れている鼻水)、においが鈍い、鼻出血、濃い鼻汁、喉がかゆい、喉が渇く、痰、咳、頭重(頭が重い、頭がしめつけられるような感じ)、頭痛、熱っぽい感じ、全身症状などの症状が現れることもあります。
この場合の皮膚のかゆみはスギ花粉皮膚炎と呼ばれています。顔、眼周囲、頚部に生じやすく、一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑で発症することが多いです。
 私たちの体は異物(抗原)が侵入すると、これと反応する物質(IgE抗体)を作る仕組みがあります。花粉から溶け出した抗原が、肥満細胞の表面に付着しているIgE抗体と結合すると、肥満細胞から化学物質が分泌され、先ほど説明したような諸症状を引き起こします。
 診断は症状、血液検査、皮膚テスト、鼻粘膜所見などからします。
最近、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の方も増えてきています。 PFASは、花粉症に合併することが多い食物アレルギーです。花粉に感作した人が特定の食物(果物・野菜など)を食べた数分後に、唇・口・喉などにイガイガ感やかゆみ・腫れなどアレルギー症状が出ることがあります。原因は、花粉症の原因物質と果物などの食物中に含まれているたんぱく質が類似しているためです。OAS(口腔アレルギー症候群)とも呼ばれます。
例:
ハンノキ、シラカンバ 飛散時期 1~6月 関連食物 リンゴ、モモ、大豆(豆乳)など
スギ、ヒノキ 飛散時期 2~5月 関連食物 トマト
オオアワガエリ、カモガヤ 飛散時期 4~10月 関連食物 メロン、スイカ、キウイなど
ヨモギ 飛散時期 7~11月 関連食物 セロリ、ニンジンなど
ブタクサ 飛散時期 7~11月 関連食物 メロン、スイカなど
花粉症の治療ですが、当院は主に鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版、アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)に基づいて行っています。鼻症状の場合、治療法の選択上病型と重症度分類が重要になります。病型は、くしゃみ・鼻漏がメインの場合のくしゃみ・鼻漏型、鼻閉がメインの場合の鼻閉型、両者がほぼ同じ場合は充全型とします。重症度分類は1日平均くしゃみ発作回数、1日平均鼻をかむ回数、鼻閉の程度によって、最重症、重症、中等症、軽症、無症状に分けられます。
初期療法、軽症の場合の治療
第2世代抗ヒスタミン薬、遊離抑制薬、抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬、Th2サイトカイン阻害薬、鼻噴霧用ステロイド薬
中等症の場合の治療
くしゃみ・鼻漏型
第2世代抗ヒスタミン薬+鼻噴霧用ステロイド薬
鼻閉型または鼻閉を主とする充全型
抗ロイコトリエン薬または抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬+鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬もしくは第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤(本剤の使用は鼻閉症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン薬単独療法などへの切り替えを考慮)+鼻噴霧用ステロイド薬
重症・最重症の場合の治療
くしゃみ・鼻漏型
鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬
鼻閉型または鼻閉を主とする充全型
鼻噴霧用ステロイド薬+抗ロイコトリエン薬または抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬+第2世代抗ヒスタミン薬もしくは鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤(本剤の使用は鼻閉症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン薬単独療法などへの切り替えを考慮)
オプションとして点鼻用血管収縮薬を2週間程度、経口ステロイド薬を1週間程度用いる。
他オマリズマブ注射(抗IgE抗体)(当院では現在花粉症に対してはやっていません)による治療もあります。

眼症状に対しては、第1選択は抗アレルギー点眼薬(メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1受容体拮抗薬)です。症状が強い時期はステロイド点眼薬、非ステロイド性抗炎症薬の併用がおこなわれますが
ステロイド点眼薬の副作用として眼圧上昇があり、当院では処方していません。花粉飛散予想日の約2週間前または症状が少しでも現れた時点で抗アレルギー点眼薬の投与を開始すると花粉飛散のピーク時の症状が軽減されます。
 当院でよく行われる治療は
 ・内服薬(抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬など。眠気が出にくいのもあります)
 ・ステロイドなどの鼻噴霧薬(点鼻薬)
 ・抗ヒスタミンなどの目薬(点眼薬)
 ・ステロイド外用薬
 ・舌下免疫療法(根治を目指す治療法です、花粉飛散時期には治療開始できません)
などがあります。
他に当院では行っていませんが様々な手術療法もあります。
市販薬もいろいろありますが、クリニックの方が効果の高いものもあり種類も豊富です。
花粉症対策についてですが、
<外出時>
 ・花粉情報のチェック
 ・外出を控えめに(飛散の多い日や多い時間帯(13時から15時頃))
 ・完全防備(帽子、メガネ、マスク、マフラーを身に着けて)
 ・帰宅時は衣服などについた花粉を外ではらう
 ・帰宅後は洗顔、うがい
<家の中>
 ・ドア、窓を閉める
 ・掃除はこまめに
<就寝時>
 ・布団を外に干さない
 ・枕元の花粉をふきとる
 ・お風呂、シャワーで花粉を流す
 ・空気清浄機を活用
 などが挙げられます。
 当院ではスギ花粉症に対する舌下免疫療法の治療を行っています。
スギ花粉舌下錠シダキュアは5才以上が対象です。まずはスギ花粉症の診断が必要なため、他院で血液検査や皮膚テストなどを既にやられている方は結果をお持ちください。他院で治療中の方はお薬手帳をお持ちください。治療期間は通常3~5年になります。
 初回治療はスギ花粉の飛散していない6月から12月のみとなります。また初回治療時は、時間がかかりますので受付終了の1時間前には遅くとも受診をお願いします。