痒疹

痒疹とは痒疹丘疹を主徴とする反応性皮膚疾患です。
痒疹丘疹とは強い痒みを伴う孤立性にみられる丘疹(小さいぶつぶつ)をいいます。掻破により頂部にびらんを生じることはありますが、湿疹丘疹とは異なり他の発疹に変化しません。原則として集簇しても融合しません。

主に以下に分類されます。

 ①急性痒疹
 ②亜急性痒疹
 ③慢性痒疹:多形慢性痒疹、結節性痒疹
 ④色素性痒疹
 ⑤妊娠性痒疹

①急性痒疹
個々の皮疹が数日から1週間程度で治るものです。原因として虫刺されに対する過敏反応、食物アレルギーなどが言われていますが明確ではないです。小児に生じます。

②亜急性痒疹
急性痒疹にも慢性痒疹にも属さないものの総称です。個々の皮疹の持続期間は数週間におよびよくなったり悪くなったりを繰り返します。中高年者に多いです。内分泌疾患や代謝異常などに伴う症候性のものや、金属アレルギー、病巣感染が契機になるものなどが報告されていますが、原因不明のものが多いです。

③慢性痒疹:多形慢性痒疹、結節性痒疹
個々の皮疹が数週間から数か月にわたって持続するものです。
主に多形慢性痒疹と結節性痒疹に分類されます。
多形慢性痒疹の明確な誘因は不明です。背景に金属などのアレルギー、胃酸分泌異常などの胃腸障害、肝腎障害、性ホルモン失調、病巣感染、内臓悪性腫瘍の存在、心身症などの関与が想定されています。ピロリ菌を保菌している多形慢性痒疹において、除菌により症状の改善を認めたとの報告もあります。
結節性痒疹はブヨ、カ、シラミなどの虫刺傷後に発生することが多いため、虫刺症が原因の一つとされています。その背景に、ストレス、アトピー素因、アレルギー、感染、肝腎障害、胃腸障害、貧血などの関与が想定されています。関連疾患としては他に静脈うっ滞、毛包炎、貨幣状湿疹、甲状腺機能亢進、真性多血症、リンパ腫、白血病、グルテン過敏症、胃がん、胆道閉そく症、抗酸菌、HIV、B型肝炎、C型肝炎があります。

④色素性痒疹
若年者の体幹に紅色丘疹が生じ、痒みが非常に強いです。1週間程度で色素沈着を残して消退します。再発を繰り返すうちに色素沈着は増強し、樹枝状、網目状となります。ダイエットや糖尿病の発症、悪化に基づくケトーシスが発症に関与する場合が多いです。

⑤妊娠性痒疹
妊娠中期に四肢、体幹に多発、散在性に見られる強い掻痒を伴う丘疹で通常は出産後2~3か月以内に改善することが多いです。